「胎児標本問題を考える星塚の集い」(2008年1月11日)

星塚敬愛園「胎児標本」火葬問題についての緊急声明

胎児標本の取り扱いに関する要望書を提出

 2006年7月31日、厚労大臣宛に「胎児標本の取扱に関する要望書」を提出し、また、共同代表の鎌田慧氏、國本衛氏、訓覇浩氏、神美知宏氏と事務局長藤野豊氏、それに在京の青年・学生部会の会員の方達に参加して頂き、厚労省記者クラブで記者会見を致しました。
 なお、この要望書には、別紙に紹介されている「ハンセン病療養所における強制断種・強制堕胎・新生児殺等違法行為の疑いを示す資料」という新資料のコピーを添付しました。  新しく発見された資料については、すでに毎日新聞他、共同通信から配信されたものが新聞各紙に掲載されました。

ハンセン病療養所の「胎児標本」の取扱いに関する要望書

厚生労働大臣川崎二郎様

ハンセン病市民学会

 昨年11 月28 日の朝日新聞の報道によれば、厚生労働省は、各療養所に対して、「今年度中に各施設で丁重に焼却、埋葬(合祀)、供養および慰霊を行う」旨の通知を行ったとされています。  厚生労働省が設置した第三者機関「ハンセン病問題に関する検証会議」の『最終報告書』では、「今回の検証事項の中で、この胎児標本の問題ほど、入所者の人間としての尊厳を傷つけ続けているものはない」と述べ、「標本として残される場合の基本は遺族の承諾であるが、検証の結果そのような承諾書はどの施設にも存在していない」と指摘して、法的にも違法であった可能性が高いことを示唆しています。標本化に際して遺族の承諾をとっていなかった事実を踏まえれば、標本の焼却、埋葬に関しては、なおさら当事者である遺族女性の意向が最大限に尊重されなければならないと考えます。当事者の意向に反した胎児標本の焼却、埋葬が強行されれば、国は二重の過ちを犯すことになります。
 また、当事者の意向調査は、国の責任において、じっくりと時間をかけてなされるべきであると考えます。「今年度中に」という時期を限定したやり方は、当事者に大きな精神的圧迫を加え、当事者の心に大きな傷跡を残す危険性があります。さらに、胎児標本が、何のために、何を目的として作成されたのか、その歴史的な検証もまだ済んでいません。また、標本にされた多くの胎児の身元すら判明していない事実、さらには標本のなかには新生児も含まれているのではないかという疑問も解明されていない事実を鑑みれば、国の責任において、関係者のプライバシーなどにも十分配慮した丁寧な身元確認を行い、胎児標本に関する歴史の検証をきちんと行うことが先決であると考えます。すくなくとも、胎児標本を焼却・埋葬することで、この問題の真相解明に蓋をするようなことは許されません。
 以上のような理由から、私たちハンセン病市民学会は、早急かつ全国一律の胎児標本の焼却、埋葬に強く反対します。

(2006年1月16日)