ソロクト・楽生院訴訟
同朋運動を続ける会(西本願寺有志の会) 事務局代表 武田達城

東京地方裁判所は、10月25日に韓国小鹿島更生園(以下「ソロクト」)・台湾楽生院の入所者らが起こした、ハンセン病補償法(以下「補償法」)に基づく不支給処分取り消しを求める二つの訴訟に対し、韓国の原告らの訴えを棄却する一方、台湾の原告らの訴えについては全面的に認めるという異なる判断を示しました。
私たち同朋運動を続ける会は、この判断に対し戸惑いを覚えると同時に、韓国の原告らに対する判決に強い憤りと落胆を感じざるをえません。
この訴訟は、多くの差別の現実を明らかにしました。公判では、施設内での長時間労働の強制、懲罰としての断種、日本人職員による暴力的支配等など、日本国内の療養所以上に過酷な非人間的な状況にあったことが証言されました。私たちは、病と隔離という苦悩に加え、植民地下の苦しみが入所者に重くのしかかっていた事実を教えられました。
そして、今回の訴訟は、かつて日本が侵略・植民地支配した人びとに今なお残る深い心の傷と、その歴史に真に向き合いきれない私たちのあり様を見つめなおす契機となりました。同時に、現在もなお、私たちが聞こうとしない被害者の声が厳然としてあることに気づかされたのであります。
そうした学びの中で私たちは、今回の二つの訴訟が隔離からの解放を訴えた先の熊本地方裁判所が2001年5月11日に示した「「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟」(以下「国賠訴訟」)の判決と、これまでの広範な差別・被差別からの解放の闘いの精神に沿うものであると、連帯の意をもって受け止めてきました。そして訴訟が、ハンセン病療養所の入・退所者をはじめ遺・家族、そして国境を超えた多くの人びとに支援の輪が広がったことに大きな意義があります。
さて、この裁判では、日本統治下のソロクト、台湾楽生院が、「補償法」に規定する「国立療養所等」に該当するのかどうかということでした。それに対して台湾楽生院の勝訴判決では、「補償法は広く網羅的にハンセン病の救護・療養施設に入所していた者を救済しようとする特別な立法」であり、「国籍や居住地による制限もないと解すべきである」とした上で、「強制隔離された施設が台湾にあったというだけの理由で、補償対象から除外することは平等取り扱いの原則から好ましくない」という判断を示しました。この認識は、言うまでもなく国賠訴訟判決を受けて制定された「補償法」の立法の精神を尊重したものであります。
それに対し、韓国の原告らの訴えが棄却された判決では、国会審議の中で植民地統治下における入所者の被害実態が明らかになっていなかった背景を根拠にしたものであり、被害者・被差別者の訴えを加害・差別者の都合で退けたもので、違憲であった「らい予防法」を放置してきた裁判所が、再び同じ過ちを犯したことになります。ま
さに、人間の尊厳・いたみ、苦しみに正面から向き合おうとしないだけでなく、原告のこれまでの隔離の苦しみをさらに増幅させるものであると言わねばなりません。この事実に立つ時、私たちは韓国の原告らに対する判決に大きな憤りを感じると共に、強く抗議せざるをえません。
私たちは、いま改めてあらゆる差別・被差別からの解放を願うすべての人びとと連帯し、御同朋の社会をめざす同朋運動の願いを顕現する歩みを進めていく決意を宣すると共に、速やかに両療養所の入所者を補償対象とされるよう強く願うものであります。
(2005年10月25日)