教育部会

5月14日午後:第2回総会(報告)

(※一部、敬称略)

ハンセン病市民学会教育部会設立総会の内容(概略)

活動の趣旨・目的・方針などを確認、承認

 2006年5月14日(日)午後13:45から15:10まで、富山国際会議場206号会議室において、教育部会設立総会が開催された。世話人の延和聰さんより「ハンセン病市民学会教育部会設立にあたっての趣旨・目的・2006年度活動方針」などが提起され、活動報告や世話人選出などについて説明があった後、参加者の拍手によって提案文書が承認された。
 参加者はのべ35人であった。

佐久間建さんの研究報告 -「教師の『加害者性』を考える」- について

 交流学習会として、世話人の佐久間建さんの実践「教師の『加害者性』を考える」が報告された(以下、参照)。全生園との出会いや小学校教師としての姿勢についてふれたあと、授業実践についての報告がなされた(具体的な実践内容については2005年12月の準備会で報告)。
 まず、2002年度の指導計画に関わって、低学年・中学年・高学年それぞれの活動内容、約100時間(6年生)の授業については「ハンセン病療養所にはこれだけ子どもたちにとって学ぶことがある」ということを知ってほしいこと、そして、「入所者の人とのかかわりを大事にしていること」について述べた。
 次に、野火止小学校での実践では、「全生園を好きになってもらう」ために、桜を見に行ったり、園内の多くの木々一本一本に対する入所者の思いについて考えて欲しいこと。
 そして、学習の柱として、
(1)病気について正しく知る 
(2)差別の歴史について知る
(3)未来に向かって考える
ことを示された。その他、『全生今昔』にある「くさりぼう」という表現についてや、現在の教育現場の問題として新任教員など含めて政治のことや差別のことを知らない教師が多いことなどにも言及された。
 次に、本日の本題である教師の「加害者性」を考えることについてである。教育行政や教育学界の責任とともに、教師一人ひとりの主体性を問うことが必要であり、「子どもと教師」に焦点を絞りたいということで、資料にそって報告された。
 具体的には、報告者の佐久間さんの文章にゆだねるが、主に以下のようなことについて述べられた。
(1)教師用指導書(尋常小学修身書)の記述の問題点、
(2)「患者教師」として関わった人々についての調査、実態の解明(全患協運動のリーダーたちの多くの人たちにとっての原点が「患者教師」だった)
(3)手紙や面会などのやりとりがほとんどないこと
(4)いじめや差別の問題
(5)教育権の保障について
(6)「派遣教師」で自ら療養所の教師になった人がいないこと、人間的な関係の構築における限界(問題点を含めたすぐれた実践記録としての『らい学級の記録』)
(7)教材として不適切なもの、
(8)奥村学先生のこと
等であった。

質疑応答

 質疑の時間は、積極的な提案が多く、大変有意義なひと時となった。以下、質問者・提案者とその内容についてふれておきたい。
[1]柴田健さん(神奈川県立菅高校教員・教育部会員)
 13年くらい前から全生園に高校生や大学生を連れて行っています。
(1)教科書分析については、学校の教員に呼びかけ、教科ごとなどに手分けしていったらどうでしょうか。個人的に副教材・副読本を集めていますが、やるのなら組織的な対応が必要だと思います。
(2)各自治体が作成している副読本にハンセン病のことについて書かせていく取り組みが必要ではないでしょうか。例として、香川の豊島の産廃問題は全国では知られているのに、地元の副教材には書かれていません。療養所のある自治体を中心に、副読本に書かせていく取り組みを組織的に行ったらどうかと思います。

⇒自治体の教育委員会にアプローチすることは必要ですし、判決と補償法を経て、国や自治体は具体的に取り組むことが求められてもいます。わたしたちの働きかけも課題です。(事務局世話人:延)

[2]Iさん(宮古南静園入所者自治会運営委員)
 教師の加害者性ということについて、宮古にも学校があったが、教科書がずっと変わらないとか教師が白衣(予防着)を着て授業をやっていたということはありました。授業ごとに、一時間ごとに消毒をしていました。当時は当たり前だと思っていたが、教師が差別に加担していたということでしょう。
   
[3]川元克秀さん(埼玉大学教育学部教員)
 提案資料3頁目5行目以降について、検証の内容については、もう少し広がりをもたせてほしいと思います。「ハンセン病の歴史の中で果たした役割(その加害者性)」だけではなく、実際に行われた授業や現在の授業実践の分析、その評価などもふくめて広げる可能性があると考えます。

⇒提案内容はそういうことも含んでいるので積極的に受けとめたいと思います。(事務局世話人:江連)
 相互の検証を通すことで自分自身の生き方を問うような実践と交流を進めたいと思います。教師の主体性が問われているということです。(事務局世話人:延)

[4]吉川由紀さん(沖縄愛楽園証言集編集事務局・教育部会員)
 (1)見学に来る学校への対応について、園内での学習や見学者が増え、案内をするときに感じることがあります。学年300人くらいで人権学習として40人くらいのグループに分かれて来園する学校があります。そうすると何となく来た生徒もいて、話を聞かず別なことばかりしており、説明をしていてむなしくなるときがあります。引率教員はとくに注意・指導をしてくれるわけでもなく、ハンドマイクを使ってくださいなどといわれるのですが、観光ガイドでもないのにそんなことは出来ません。入園者の方も「どうせ聞いてないのだからもう言わない」とか「みせものにされている」との声もあります。生活圏の中に入ってきて学んだ気になって帰っていくようでいいのでしょうか。
 (2)証言集について、今度発刊される証言集については、小中高の図書館に入れる予定です。子どもが読めるようにするための工夫、写真をいれるとか等を教えてほしいです。

⇒学校側へはしっかりと指導するように、こちらからちゃんと言うことが必要です。事前確認ができてはじめて見学を受け入れるかどうかになると思います。(事務局世話人:江連・延)

[5]Kさん(金沢市の小学校教員・女性)
 浅井あいさんとの交流をしてきました。金沢に迎えるときや彼女のお葬式などに行った子どもたちの担任です。吉川さんの話に関わって、やはり子どもたちの中に、共有できる何かを持っていないとだめなのではないかと思います。自分たちもいつかはとかいう想像力などが必要では。また、学校でどんな人権学習をしてきたかという事前学習の内容にもよると思います。

[6]Rさん(宮古島市議会議員・女性)
 見学は大勢にならないようにする工夫が必要ではないでしょうか。副教材の作成に関わって、使いたいという絵本になかなかめぐり合えていません。やはりハンセン病をどう教えるかという観点がしっかりしていないといけないと思います。伝える作業(みやこ・あんなの会編『戦争を乗り越えて』など)の元になるものを作る難しさを感じています。どういう副教材が必要か、この点での交流をしたいです。なお、5月28日に中学生、高校生、教員、回復者や退所者などを含めて、はじめてのパネルディスカッションをする予定です。

[7]福安和子さん(準備委員会・教育部会員)
 42年間の保育園(名簿は幼稚園?)での仕事をしてきて、このハンセン病の問題を伝えるにはどうしたらいいのだろうと思い続けてきました。そこで地域の人たちや差別を持ち続けてきた高齢の人たちにも知ってほしいと考え、絵本で伝えようと思ったのです(絵本『時の響きて』)。絵を入れ、文字は少なく、でも内容はしっかり伝えたい、そういう内容を目指した絵本です。

[8]宝月ちか子さん(東京・ハート相談センター・女性)
 回復者や家族の方の支援をしています。いま、三重県の中学の先生から修学旅行で全生園に寄ることができないので、相談センターでという相談を受けています。事前学習として、「古い通信簿」という文章があり、支援者の方が絵本にしてくださるという話になっています。三重の先生は、この文章を印刷して事前に読み合わせをして下さいました。また、教員の方には『開かれた扉』(ハンセン病違憲国賠訴訟弁護団、講談社)を事前学習として読んでいただいています。

 以上、あっという間に時間が経ってしまった。世話人の延さんより、中学の授業では「まとめとして福安さんの絵本を使っている」ということ、そして、「自分自身が感じて語ることだと思います」ということが述べられた。また、報告者の佐久間さんからは、「いま教師に出会う旅をしています」との言葉が述べられた。最後に、次回の教育部会を12月末に大島青松園で開催する予定であることを確認し、設立総会が終了した。
                                  
「まとめ」担当:江連恭弘

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