家族部会

ハンセン病市民学会「家族部会」にご参加ください

部会長 新田良子

 ハンセン病隔離政策に対する熊本訴訟裁判中に、ハンセン病だった母を見送った後、遺族原告として恐る恐る裁判に参加していた私が、勝利判決後、ハンセン病家族の代表として活動を始めようとは夢にも思わないことでした。いま、あの世から、両親は、私のことをどのような思いで見守ってくれていることでしょうか。仏壇に手を合わせては、日々語りかけています。
 あの裁判中、怯えながら裁判所に出向いた遺族たちでした。弁護士さんの紹介で初めて出会うことのできた遺族たちは、まるでずっと昔出会ったことがあったような親近感と感動を覚えたのです。それは、お互いに心の奥底に求めあったものが吹き出るかのようでした。これまでけっして語ることのできなかった親の真実を、なんのためらいもなく、ほとばしるように語らい、そして、お互いを受け入れることができたのです。「ここでは真実の自分になれる」。誰もが、これまでの人生においてようやく心許せる知己を得た思いだったのです。

 それからの私たちは、裁判のたびに会えるその喜びに浸っていました。裁判が終わったとしても「さよなら」はしたくない。そんな私たちの想いを知っているかのように、弁護士さんのはからいで立ち上げることのできた「れんげ草の会 」(ハンセン病遺族・家族の会)でした。会員も少しずつ増えて、いまでは年一度の総会と親睦会を定期的に開催するまでになりました。
 しかし、一方では、90年もの長きにわたった隔離政策。罪人を引きずっていくよりも残酷な強制隔離。残された家族への凄まじい偏見差別。それを経験した者の心の扉を開くことは、容易ではないことも感じました。

 それでも、過酷な人生を生き抜いた私たちにも、裁判の勝利判決で、ほのかな光が差し込んできたのを感じることができたのです。しかし、やっと私たちの心も開くときがきたと思った矢先に起こった黒川温泉宿泊拒否事件、その後の恵楓園入所者のみなさんへの誹謗中傷の数々は、ふたたび私たちの心を闇に陥れてしまいました。
 「人びとのハンセン病に対する考えだけは、けっして変わるものではない。ハンセン病者の家族は、やはり、嘘偽りで固めた心のままで生き抜くしかないのだ……」そう思ったのでした。しかし、そのとき、私を奮い立たせるものがあったのです。それは、まぎれもなく、「れんげ草の会」の仲間でした。そのとき、数人しかいなかった仲間が、同じ思いで電話に集中していたのです。私たちの人生に、同時に同じ悩みを共有できる人が1人でもいたでしょうか。

 このことを機に、私は同じ苦しみにある者は、同じことを考え、求めあうものであることを痛感し、「れんげ草の会」の継続と発展の必要性を強く思ったのでした。
 こうして、「れんげ草の会」は、仲間の強い絆で継続し発展しております。
 本年(2005年)5月14日〜15日に、判決4周年記念行事とあわせて、第1回のハンセン病市民学会が、熊本、恵楓園において、開催されました。私たちは、記念行事にあわせて、「れんげ草の会」の総会を開催し、これからの目標について話し合いました。このようにハンセン病市民学会も始まったので、これからは、家族被害についての検証を深め、世の中に広く訴えていきたいと考えました。
 こうして立ち上がったのが、ハンセン病市民学会の「家族部会」です。
 家族の出会いには、いつも感動があります。
 同じような苦しみのなかで生きてきた者の出会いには、共感しあう癒しがあります。


―ハンセン病の家族のみなさま―

 この機会に、「れんげ草の会」に入会していただくとともに、「家族部会」にも入会してください。そして、お互いに、新たに生きてゆく心の糧を得ようではありませんか。


―退所者のみなさま、非入所のみなさま―

 ハンセン病隔離政策は、その当事者のみならず家族をも苦しめる政策であった、と言い切っても、けっして過言ではないと思います。隔離政策によって作り出され、強められた、差別偏見の恐ろしさから逃れるために、隠れて生きることを強いられた非入所の方々、また、人間らしく生きていこうとハンセン病療養所から退所し、いまも身をひそめて暮らしている方々、私たち家族は、病気にはならなかったにしても、嘘偽りの人生を怯えながら生きてきたことでは、みなさんと共有するものがあります。これからは、私たちと過去の苦しみを分かち合い、生きてゆくための心の糧を得ようではありませんか。ぜひ、「家族部会」にご入会ください。


―入所者のみなさま―

 いまもなお、園内の納骨堂にはたくさんの遺骨が残されています。いまだ故郷に帰ることのできない方々のなかには、家族に及ぼす被害の恐ろしさに、あえて故郷と断絶し、いまも密かに入所されている方もおられることと思います。
 なぜ、遺骨を家族が引き取らないのでしょうか。なぜ、家族との交流が絶たれたままなのでしょうか。家族と交流を回復させる方法はないのでしょうか。
 私たちは、家族と入所者のみなさんとが交流する方法を求めてゆきたいと思います。
 ハンセン病隔離政策がもたらした最も大きな衝撃的な出来事、私たち家族から無理やりに親やきょうだいを引き裂き、その代わりに、広く国民のあいだに偏見と差別を作出助長することによって、私たち家族にまで偏見と差別を植えつけていった国の政策、ここが、ハンセン病隔離政策の核心ではないでしょうか。
 私たち家族は、このときから生涯癒えない心の傷を負ってしまったのです。このまま時が過ぎるのを待つのであれば、裁判勝利さえも意味をなさなくなってしまいます。
 そのためには、家族、退所者、非入所者、入所者、ハンセン病にかかわるすべての人が、怯えながら暮らすことのない社会をつくっていくために、まずは、ハンセン病市民学会「家族部会」において、ともに手を携えようではありませんか。それによって、解決できることを見いだしてゆきたいのです。


―弁護士、学者、支援のみなさま―

 最後に、弁護士、学者の先生がた、支援してくださいます方々にとって、家族の問題は、心情は理解できるけれども、じっさいには、解決策を見いだすのは難しいと受け取られているのではないかと思います。
 しかし、それだけに、家族の問題を置き去りにしては、ハンセン病問題はけっして終わらないということも、おわかりになっていることと思います。どうか、「家族部会」に、多くの方々のご支援をいただき、私たちの前途が明るいものになりますように、お願いいたします。

 家族部会の活動内容は、以下のとおりです。
 1. ハンセン病元患者(亡くなられた方、いまなお療養所に入所されている方、退所された方、非入所の方)の家族(以下「家族」と略記)を中心として、お互いを支えあう交流を深める。
 2. 家族の受けてきた被害実態を検証する。
 3. 家族の立場からハンセン病問題の解決にむけた提言をおこなう。








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