並里まさ子 おうえんポリクリニック便り 
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 師走の真っ只中、風邪が流行っていますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?
和泉先生のインドネシア便り、いつも楽しく拝見しています。この前の11号を見て療養所時代を思い出し、少しお話したいと思います。実は、このお便りは11月中に出すつもりだったのですが、日々の仕事と母の介護に翻弄されているうちに、来年の顔が見えそうなほどに近づいてきてしまいました。
 さて、和泉先生のお話で「ハンセン病の血清診断」と書かれているのは、らい菌に特異的な血清抗体価の測定で、和泉先生が多摩研(ハンセン病研究センター)に在職中、たくさんの患者さんの血清を測定していただきました。全生園には活動性病変の治まらない人があふれていましたから、私はとても助かりました。治療の進展具合をみたり、再発の前兆がキャッチできることもありました。ところが、和泉先生が出られてからは、ここでは検査してもらえなくなり、今は、私の昔の友人にお願いしていることは、前回のクリニック便りでお知らせしたとおりです。
 流行地におけるこの血清抗体価の測定と、一般住民が鼻腔粘膜にらい菌の遺伝子(DNA)を持っているかどうかの調査は、感染・発症に関する疫学調査として、世界のハンセン病対策で大きな注目を集めました。またらい菌DNAの塩基配列の解析は、近い将来感染源の追跡が可能になるだろうと考えられ、流行地における新たな予防対策につながる画期的な研究として注目されています。
 私は数年前の療養所(楽泉園)在任中、和泉先生の助言を得て、ハンセン病研究センターの松岡先生(インドネシア便りにも紹介されていました)や、らい菌の薬剤耐性で活躍された柏原先生達とともに、厚労省の委託研究に応募しました。国際的な学会で活躍する3人の研究者の協力を得て応募したあの時の計画書は、今でもすばらしかったと自画自賛しています。実現すれば、流行地でのハンセン病対策に、少なからず貢献できたはずだと思います。ところが対抗者が出て、我々の計画書は不採用になりました。信じられない思いでしたが、採用された対抗者の面々を見て、納得せざるを得ませんでした。なんと、全生園事件で「山下さんの治療は間違っていなかった」と証言した、ハンセン病研究センター生体防衛部長のI医師と、彼の率いる面々でした。当時は全生園裁判に突入した直後で、原告側と被告国の側が真っ向に対立したさなかのこと、負けても仕方がないのかも知れません。それにしても、採用された彼らの研究内容を1年後の報告書で知りましたが、その内容のお粗末なこと、これにもまた驚きました。しかしここに至って、国への未練がぷっつり切れたのは、私にとって幸いだったかも知れません。ただ私の共同研究者に名を連ねてくださった方々には、申し訳ないことでした。年間約2000万円?の研究費が3年間、もっと有効に使えたはずなのに、国税の無駄使いは、ここでも目に余ります。

 向寒の折、風邪など惹かれませんように、そして良い年をお迎えください。

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