和泉眞藏 インドネシア便り

1【第52回世界ハンセン病デー】
 ハンセン病問題に関心をお持ちの皆様、ハンセン病市民学会(仮称)をご支援くださりありがとうございます。発起人の和泉です。現在独立行政法人国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとしてインドネシアでハンセン病の疫学的研究をしています。これから時々市民学会のホームページ(HP)にインドネシアからの「たより」を送らせて頂きます。今回はその1回目です。

 皆様は「世界ハンセン病デー」(World Leprosy Day)というのをご存じでしょうか。初めて耳にするという方も多いかと思います。日本ではほとんど知られていませんが、広く世界で行われており今年で52回目になります。毎年1月25日がその日と定められており、ハンセン病に対する正しい啓発と患者の幸せを願って多くの国で様々な行事が行われます。インドネシアでも毎年1月末に全国規模の行事が行われますが、今年は3月9日に北スラベシ州のマナドで開催されました。開催日が大幅に遅れたのは、もちろんスマトラ島沖の巨大地震と津波の救援に国を挙げて取り組んでいたからです。筆者も専門家として招聘されたので、 その様子をご紹介しましょう。

 イベントは3部構成になっており、第1部は記念式典、第2部は実務担当者を対象にしたセミナー、第3部は医師を対象にしたセミナーでした。

 今年の記念式典の標語は『貧困軽減のためにハンセン病のないインドネシアを』でした。合唱団の歌の中、ファディラ保健大臣(循環器内科が専門の女医)が入場し記念式典が始まりました。最初に演説したのはハンセン病の国際的NGOであるILEPの代表で国際的支援について話しました。次いで北スラベシ州知事が同地におけるハンセン病について紹介し、最後に保健大臣がインドネシアのハンセン病の現状について話し、インドネシアが世界第4位の流行国から第3位の流行国になったことを報告し、頑張ってインドネシアのハンセン病を制圧しようと挨拶しました。最後に事業の成功を祈願してイスラム教やキリスト教などによるお祈りがあり式典が終わりました。続いて大臣を歓迎する地方色豊かな音楽と踊りがありましたが、ほとんどの参列者はそれを無視して会場の後方でコーヒーブレークとおしゃべりを楽しんでいました。日本では考えられない光景です。

 第2部と3部は、「ハ ンセン病に関する最新知見」が統一テーマでした。第2部のセミナーでは、インドネシアハンセン病協会のダイアナ先生が「患者側から見たハンセン病対策」について発表し、次いでオランダ人の理学療法士が「患者による健康の自己管理(セルフケア)」について講演し、障害を防ぐ自己責任を強調しました。

 第3部の学術セミナーでは筆者を含む3人の専門医が、「臨床と治療」、「投薬による発病予防」、「疫学的研究最近の進歩」について報告しました。私の演題は「ハンセン病流行地における分子疫学研究の役割」で、ハンセン病の世界的現状と分子疫学という新しい手法を用いたらい菌の感染源や感染経路の探求について私たちが行っている最新の研究成果を発表しました。そして、ハンセン病流行の歴史から学ぶことが大切であること、また現在世界で進められている制圧対策がよって立つ論理の脆さを指摘し、いまの対策を続けてもハンセン病問題は解決しないのではないかと疑問を投げかけました。ハンセン病がいま直面している問題点などについては次回以降にお話ししましょう。

 日本では長年、貞明皇后の誕生日である6月25日を「ハンセン病を正しく理解する 日」とし、その前後に「ハンセン病を正しく理解する週間」が行われています。しかし、日本型絶対隔離絶滅政策と深く結びついているこの催しを廃止し、熊本判決が出た5月11日を新しく「ハンセン病を正しく理解する日」にする案があるようです。この案は確かに魅力的ですが、私は「世界ハンセン病デー」を日本でも取り入れるのが適当ではないかと考えています。なぜなら、隔離政策廃止の世界的潮流から逸脱した国際的視野のなさが今日の悲劇を生んだからです。

 皆様はどう考えられますか。
(2005年3月11日)
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