<ハンセン病 >思い伝われ―教室からの発信

 
 小学校の教師をしている私が、ハンセン病と出合ってからの4年間を振り返ってみたい。その中に今後の啓発のヒント があるのではないだろうか。

2002年度 2年生担任


出会い


 2002年3月、「ハンセン病回復者の社会復帰に向けて共に歩む会・大分」の総会が行われた。私は、労働組合関係の参加要請ということで、同僚に誘われて参加した。そのときに初めてハンセン病回復者の実情を共に歩む会の方や徳田靖之弁護士から聞いた。
 また、菊池恵楓園に住む阿部智子さん(園名)が今もふるさとへ帰れないでいることを語ってくれたとき、胸が詰まる思いがした。生まれた家に帰れなければ私が案内してふるさとを感じてもらえないだろうか?自分にも何かできないだろうか、何かしたいと思った。
 それから阿部さんとの接点をつくることを考えた。話を聞いたその場で自分の思いを手紙に書いてみたが、初対面でもあるので渡すことはできなかった。もう少し阿部さんのことを知って話しかけるチャンスをつくりたいと思った。

報道・仲間・衝撃


 7月になって新聞でハンセン病回復者の宮里新一さんが大分市で生き直しコンサートをすることを知った。そのころの私は、「ハンセン病」という言葉へのアンテナが阿部さんとの出会い以来、急に高くなっていた。それに「生き直し」という言葉がとても気になった。いっしょに行ってくれそうな友だちを誘ってみたがあいにく都合が合わず一人で出かけた。         
 コンサートの司会をしていたのは、共に歩む会の方たちだった。会の方たちが自主的に思いをもって活動していることが新鮮に伝わってきた。私はそれまで市民運動をしている人に出会ったことがほとんどなかったせいかもしれない。またそのときに徳田靖之弁護士が裁判について語った。この裁判は「アリがゾウに闘いを挑むような大変な裁判だった」という話を聞いて、ぜひこの話を子どもたちに伝えたいと思った。ハンセン病の問題や支援している方たちとの出会いが、自分にとっては衝撃的であった。

日常的なつながり・継続・創造・行動


 私は、それからインターネットで宮里さんのホームページを訪ねた。掲示板に書き込みをするようになって宮里さんや支援の方たちとつながった。そして毎日ホームページでハンセン病について調べ始めた。
 当時私は小学校2年生の担任をしていたので、子どもたちにわかりやすく話をするために紙芝居を作ることにした。回復者のアリさんが、国であるゾウと闘い、歌を通して生き直しをする話を考えた。紙芝居の話が概略できたところでハンセン病に詳しい方に意見をもらおうと思い、宮里さんの掲示板で知り合った国宗直子弁護士に意見をもらいながら修正していった。
 「アリとゾウ」という紙芝居ができたので、その夏8月に行われたある研究会にレポートとして持ち込んだ。そのときに他の人から意見をもらったのは、「ハンセン病の問題は重い問題だから、軽はずみな気持ちで取り組んではいけない。」ということだった。私は、この慎重論が一つの壁になっているのだと思った。重い問題だからといってしり込みをしていたら広がらないと思った。ただでさえハンセン病の問題は難しい感じがするからとっつきにくいという声に対して、だったら簡単に分かりやすくしていくことが啓発には大事だとも思った。

教室での実践・子どもから保護者へ


 紙芝居「アリとゾウ」 2学期が始まって、2年生の子どもたちに紙芝居をした。質問に答えながらハンセン病について説明をした。主人公のアリを「ありんちゃん」というかわいいキャラクターにしたせいか、子どもたちはありんちゃんにはまってくれた。ありんちゃんの絵を描いたり、ありんちゃんを主人公にした紙芝居を作り始めた。私は、支援の人たちの存在もぜひ子どもたちに伝えたかったし、子どもたちからの質問に答えるためにも次々と紙芝居を作っていった。
 学級通信でハンセン病との出会いや紙芝居について思いを保護者に伝えたところ多くの保護者から反応をもらった。そこで「アリとゾウ」の紙芝居を絵本の形にして保護者にも希望者に読んでもらい、感想をもらうことにした。そのことがきっかけで保護者とメールや手紙の交換をするようになった。人権について生き方についてお互いに思いを伝えた。紙芝居づくりにつまずいたときには、原稿を送っていっしょに考えてもらった。


 そんなクラスの雰囲気をときどき宮里さんの掲示板で知らせた。あるとき掲示板に「いつでも別府に遊びに来てください」と宮里さんに当てて書き込んだことがあったのだが、11月になって本当に宮里さんが別府に遊びに来てくれた。そこで学校に来てもらい子どもたちとはじめての交流が実現した。歌を歌ってもらい、いっしょに給食を食べた。その後宮里さんが大分県朝地町でコンサートをしたときには、クラスの保護者と子どもも駆けつけてくれた。
 3月の最後の懇談会では、ハンセン病の問題に取り組んだことがとても印象深く、子どもたちにとってよかったと感想をもらった。保護者の多くは、心を育てるこのような学習を子どもたちにしてほしいと思っているということを強く感じた。

保護者とのつながりから発展


 保護者からの感想
○子どもたちの「差別の心」がまだまっ白のうちにありんちゃんを好きになれて、きっと、ずっとハンセン病に対しては柔らかく受け止めることが出来るのではないでしょうか。ありんちゃんを語る子どもの無垢な姿に静かな感動を覚えました。

○「アリとゾウ」の取り組みより、娘はいろいろなことを学習しています。子どもの頃にいろんなことが受け入れられる人になれるように学んでほしい。

○子どもの純粋な気もちを見ていて、私たちは娘と同じ気持ち・目線でいられただろうかと思いました。娘を通していろんなことを考えさせられます

○今回「アリとゾウ」の絵本を通して、子どもたちがとても大切なことを学んでいく姿を日々感じていました。子ども同様私たち大人も考えさせられました。

 

TOP  【6-1】 【6-2】 【6-3】 【6-4】 【6-5】