<ハンセン病 >思い伝われ―教室からの発信

 

2005年度 1年生担任

 05年度も宮里さんのコンサートと学校交流訪問を企画した。1年生ということでハンセン病の問題がどこまで伝わるかわからなかったが、宮里さんに出会ったという経験だけでもいいのではないかと思った。さらに人権参観日の授業として行うことで、保護者への啓発になればと思い取り組んだ。最初に「アリとゾウ」の紙芝居を読み聞かせ、その絵本を1冊ずつ子どもに渡し、家庭での読み聞かせをお願いした。家庭で読み聞かせをしてもらった後は、子どもは話の概要をかなりつかんできていた。何度も読み聞かせてくださった家もあった。

 読み聞かせをした保護者の感想
○「アリとゾウ」子どもが休む前に読み聞かせをしました。子どもにどうだったと聞いてみると「涙出そう、アリさんがかわいそう」と言っていました。1ページ1ページ見入っていました。私自身は知らないことの怖さを思いました。真実を知ろうとする思いを持たなくてはと思いました。この絵本をきっかけにもう一度ハンセン病のこと、差別のことなど学び考えていきたいと思っています。

○絵本を読んだ後、子どもに感想を聞きました。どういうところのお話がよかったの?と聞くと、森の動物たちが集まって協力し合うところがよかったと言っていました。協力し合う=思いやりがないとできないことですよね。わたしもその部分はもちろんですが、もうひとつは、ありんちゃんがあきらめないでがんばり続けたことです。子どもにもこれからの人生の中で言い続けたいですし、私自身日々努力していかないといけないと感じました。

 交流後の保護者の感想
○今日の参観、新ちゃんのすてきな歌と子どもたちとのふれあいとてもよかったです。しっとりとした歌がそとの雨の景色と調和してすてきな時間がもてました。一つ一つの歌や曲を作る時の思いや時間はそれぞれ特別なものがあるのだろうなあと思いながら聞き入ってしまいました。ハンセン病というとても重いテーマの中で子どもたちはどこまで理解できるのだろうと思いますが、でも「差別」や「思いやり」「優しい気持ち」といった人にとって大事な心を意識する良いきっかけになったことは間違いないと思います。


学校交流訪問で 宮里新さんと子どもら
 人権参観日をきっかけに、保護者と近づけた感じがする。PTAの人権学級に参加した保護者が資料を届けてくれたり、人権について学習したいから講演会に行ってみたという話を聞いたりした。差別や偏見についての経験や思いを寄せてくれた方もいる。今は、ハンセン病の問題で気持ちがつながった保護者と、学校内のバリアフリー化について話している。





低学年にもできるハンセン病学習

  低学年にハンセン病の学習は難しいのではないかという声をよく耳にする。最近4年前担任した当時2年生だった子どもから手紙がきた。この子どもは、「アリとゾウ」の紙芝居を作ったとき登場人物のありんちゃんが大好きになり、自分でありんちゃんの紙芝居を作ってみんなに読んでくれたりした子どもである。宮里さんのコンサートには毎年参加してくれた。他にも毎年参加してくれている親子がいる。今年上映したハンセン病問題啓発映画「あつい壁」の上映会にも来てくれた。当時の保護者が、コンサートや映画会の企画に加わってくれている。

 子どもからの手紙(コンサートの感想)
○ひさしぶりに宮里新一さんを見てうれしかったです。やっぱり、宮里さんの歌はいいですね。なんだか心にじーんときました。次の日新聞を見たら、新一さんのことがのっていました。

 アリとゾウの紙芝居を作った当時の2年生とは、紙芝居や宮里さんとの思い出でつながっている。それで十分だと思う。自分が担任した子どもが何年生であろうと、ハンセン病の問題は早急に伝えなければいけないのだからやるしかない。担任の思いはきっと伝わると思う。

利用した教材など
○自作の紙芝居
・「アリとゾウ」宮里さんの生き直しコンサートに至るまでの半生
・「ありんちゃんと森のどうぶつたち」アリとゾウの改訂版
・「ドクとトリッピー」隔離に反対をしていた医者や理解者の話
・「大きいふくろうと小さいふくろう」現在の支援者の活動紹介
・「ありたちのさいばん」ハンセン病国賠訴訟のはじまりから勝利までの話
・「ふるさとへ帰れないありさん」今もふるさとへ帰れない回復者とその家族の苦しみ
・「かなしい里帰り」宿泊拒否事件を考える

○ビデオ
・特集 家族奪われたきずな 出演 阿部智子さん
・「故郷へ帰りたい、〜ハンセン病回復者の人権〜」出演 阿部智子さん 太田国男さん
・心をつないだ電子メール〜元ハンセン病患者と女子中学生〜 出演 太田国男さん
・30年ぶりの再会〜ハンセン病回復者とその家族 出演 太田国男さん
・宮里新一さんのコンサートビデオ コンサート宣伝ビデオ など

○ホームページ(利用した主なページ)
もりのどうぶつたち  管理者 溝部京子 (子どものためのハンセン病を調べるページ)
かえで共和国     管理者 太田国男  (掲示板)
HITASURA  宮里新一さんのHP (陳述書)  など

最後に

 受け持ったクラスの子どもたちに担任がハンセン病のことを伝えれば、約30〜40人の子どもたちに伝わる。その子どもたちの背後には、家族がいる。子どもが正しく学べば親御さんやおじいさん、おばあさんにも子どもの言葉で伝わっていく。子どもが療養所に行きたいと言えば、おうちの方は連れて行きたいと思う。学級での実践はささやかだが、確実に理解者は増えると実感している。

 私は、ハンセン病の学習が広がればと思い、紙芝居を作った。紙芝居は確かに取り組みやすいと思うが、何もなくても、新聞記事ひとつでもいやがらせの手紙ひとつでも、やろうと思えば子どもに伝えることはできると思う。技術ではなく、思いを伝えることが大事なのではないだろうか。
「壁の穴」びーばー写真館より
 私が出会った4年前の阿部智子さんは、支援の方が社会に何を望みますかと質問をしても何もありませんと応えていた。自分に人権があったということを自覚できずに人生の大半、60年あまりを生きてきたのだと思う。しかし、裁判で仲間の思いや過去の政策のおかしさを知り、血の噴出す思いで講演を繰り返し、学習を続けたことで、今は自分にも人権があることを自覚し、語り部として活動している。思いを伝えることの難しさや、先の見えないことへのむなしさに落ち込むことも多いと話してくださる。阿部さんの体の調子は決してよくない。いつまで語り部を続けられるかわからない。だからこそ、今できることを迷わずいっしょにやっていきたい。
 
 多くのハンセン病回復者の方たちは、療養所の中で人知れず亡くなっていく。同じ人として生まれてきながら、何の罪も無いのに社会に生きた証を残すことさえできない。回復者の方々が、子どもたちや保護者とつながり、出会った人たちの心にその思いが刻まれることが、せめてもの生きた証になるのではないかと思う。 
(「壁の穴」びーばー写真館より)

(2005年9月18日)

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