このレポートは「偶然に気づいたこと」から出発した、図書データ分類を「ハンセン病」表記に替える取り組みの経過報告です。
ハンセン病は、かつて「癩(らい)」、「らい病」と呼ばれていましたが、1996年(平成8年)、90年余の長きにわたる「らい予防法」が廃止されて以来、医学・法律・歴史的用語として使用される表記、表現を除いて、すべて「ハンセン病」と記されるようになりました。
2006年11月21日、職場の昼休憩。インターネットを利用して、わが町大山町立図書館の蔵書検索で、鳥取県出身著者による「島が動いた」という図書を検索したところ、パソコンの画面に「癩(らいは筆者ふりがな)」という文言が表示されました。それは「島が動いた」という図書に付属する詳細情報の中の一般件名(分類名)として表示されたものでした。前述の説明によれば、これは「ハンセン病」と表示される図書です。
更に詳しく調べてみると、一括件名で「らい」と表示されたのは、この「島が動いた」だけではありませでした。本来であれば、「ハンセン病」として分類されるべき多くの図書が、「らい」と分類されていることが分りました。そして、こうした表示は大山町立図書館だけではなく、鳥取県立図書館をはじめとして、県内にある公立図書館の多くが同様の状況であることが分りました。おそらく全国各地の図書館でも、同様の状況であろうという推測もしましたが、当面は鳥取県内だけでも、この現状を解消したいと考えました。
それから、約1ヶ月間。私は県内の図書館に電話をかけ、これまでのハンセン病人権問題の経緯を語る中で、一般件名変更への思いをご理解いただいた上で、「ハンセン病」に変えていただく交渉を進めました。鳥取県内では12月25日を最後に、全ての図書館で「ハンセン病」という表記に替える作業が終わりました。
振り返ってみれば、「はじめまして、大山町の清見と申します」と、ひとりの民間の人間が申し出た一般件名変更の願いを、全ての図書館が聞き入れていただいたことに感謝すると共に、ハンセン病人権問題への向き合いの姿勢に驚かされました。
しかし、この1ヶ月間に私が調査した結果からみても、こうした現状は鳥取県内だけではなく、全国の公立図書館でも幾つかの例外を除いて、同様の状況にあることが分りました。今、思いを同じくする皆さんと相談しながら、 お知恵をお借りしながら、取り組みを進めています。
解決には、ふたつのポイントがあります。
ひとつには「図書館に提供される」データを替える必要があります。
図書情報は、大手の図書取次業者が作成して図書館に提供されますので、「元」を変えてもらう必要があります。この1ヶ月間、図書取次業者への依頼や交渉の中で、把握できたこと、変わってきたことがあります。大手業者が3社ありますが、既に2社が「ハンセン病」表記に変更されている(2005年頃)との回答をいただきました。残りの1社についても、2006年末までに対応する旨の回答がありました。従って、2007年から「図書館に提供される」図書情報の全てが「ハンセン病」表記に変わります。
もうひとつの問題があります、既に当該表記が登録されてしまっている個々の図書館のデータを修正する必要があります。鳥取県内の図書館にお願いしたように、それぞれの図書館での修正作業が必要です。ひとつひとつの図書館に連絡をするには、大変な労力が必要です。
誰がどのように伝え、修正作業を促し、どう検証していくのかという課題があります。各地で「声をあげる輪を広げながら」、早期の是正を実現するためのアイデアが考えていきたいと思っています。
幸いなことに、1月上旬に九州地方紙の2紙が、この問題を取り上げて記事としていただきました。
大きな輪となることを願っています。
見過ごしてきたことの積み重ねが、気付いていたはずの積み重ねが…。私たちはハンセン病人権問題から、このことを強く学んできたはずだったのですが…。人権問題での学びで共感するものがあるとすれば、私たちの生活や仕事を振り返える中で気付くことが大切だと考えています。